もし廃止するなら免税取引がいいかも
私は愛知県に住む34歳会社員です。税理士試験の消費税法に合格していまして、仕事でも税務関係のことをしています。
今日は選挙の結果が明らかになりました。自民党の圧勝でしたね。
ところで、今回はたくさんの政党が消費税減税を掲げています。
消費税法を学習した身として、現在の軽減税率対象となっている飲食料品の消費税をなくした場合について、思うことを書いてみたいと思います。
消費税をなくすとき、非課税取引とするのか免税取引とするかいずれかになるとは思いますが、非課税取引とした場合には、たとえば飲食料品の小売業者にとっては売上のほとんどが非課税売上となることから、消費税法上、非課税売上に対応する支出について課税仕入れとして経費にすることができません。
店舗の賃料だとか、レジの設備とか配送料とか水道光熱費だとか飲食料品以外のあらゆるものについては消費税の課税対象となったままであるので、それらに課せられている消費税については、小売業においてコストとして残ってしまいます。
となると、コストを回収するためには販売価格を下げることは考えづらく、飲食料品の価格は軽減税率廃止後もそのままである可能性が高いです。
販売価格を消費税分下げるためには、飲食料品を免税取引と区分して課税売上として整理することで、これまでどおりほぼすべての経費につき仕入税額控除の適用させて、小売業者には還付申告をしてもらうほうがよいのではないかと考えます。
農林水産業における食料品の販売価格を下げられるか
飲食料品について消費税を廃止するのは、生活必需品である食べ物・飲み物の価格を消費税額相当分下げることで、日常生活の経済的な負担を軽減させることを目的としています。
つまり、晩ご飯などの材料を買いにスーパーマーケットに出かけたら、いままで324円だったトマトが300円になっていれば、目標達成なわけです。
消費税は各流通の段階において、消費税相当額が商品等に価格転嫁されていくものです。
飲食料品の始まりは、農家や漁師などの農林水産業です。
彼らは、苗木や肥料や農機具など標準税率10%が課せられるさまざまなコストをもとに軽減税率対象の飲食料品を作り上げます。
そして、卸売業者や小売業者や食品加工会社などは彼らから飲食料品を仕入れて、そのままかもしくは付加価値を付して「飲食料品」として販売します。
飲食料品を販売する場合にはさきほど示したように免税取引とすることとすると、
「飲食料品は8%相当分の価格を値下げするから、その代わりに消費税の確定申告をすると経費に係る消費税額相当分の還付をうけることができる」
という理屈になるわけですが、
小売業者などがこの理屈どおりに値下げをしようという気になってもらうためには、飲食料品を農林水産業者から仕入れる際にすでに消費税額相当分だけ価格が下がっている必要があると思います。
小売業者:「いままでトマトを農家から仕入れるために270円支払っていたけれど、飲食料品の消費税が廃止になったから250円で仕入れることができるようになったよ! だから店舗価格もいままでは324円だったけどこれからは300円になりますよ!」
という流れを生み出す必要があります。
農家などの方々は、飲食料品の消費税が廃止になったとしても、コストの部分はいままでどおりで変化がありません。つまり、彼らは「飲食料品を販売する最初の人たち」です。
ということは、「飲食料品を販売する最初の人たち」が8%分の金額を適正に下げて飲食料品を販売することがまず最も大事なことだと考えられます。
その後、流通のどこかの段階のどこかの業者が消費税廃止後も飲食料品の「販売価格は据え置き」を実施してしまえば、その時点で「8%相当分の価格の値下げ」はうやむやになって消えてしまうでしょう。
したがって、飲食料品の消費税の廃止が決定したら、農林水産業者を皮切りに、どの企業もこぞって右向け右で飲食料品の販売価格を8%相当値下げをしていく必要があると思います。
でもこれは、現実にはかなり厳しいのではないでしょうか。消費税は本体価格に上乗せされてるかのような雰囲気を出していますが、実際にはもはや対価総額の一部を構成するものとなっています。
3%⇒5%⇒8%⇒10%と税率を上げてきたところで、販売価格を逆に下げるというのは企業としてはいまとなってはやりづらいものだと思います。
ですから、私は、飲食料品の消費税を廃止したことによって、飲食料品の価格が一様に下がるとはとても思えません。どうがんばっても「なんとなく値下がりしたものがあるかも」程度にしかならないような気がしてなりません。
外食産業はどうなるのか
飲食店はどんな状況になるのでしょうか。
飲食店は、飲食料品の消費税が廃止された場合、仕入れは免税もしくは非課税として仕入れ税額控除を受けることはできなくなります。
一方、外食サービスは標準税率10%のままですから、消費税法上、課税売上高はこれまでどおりだけど仕入れとしての支出は経費にならない、ということになります。
これはかなりの消費税の納税額になりそうですよね。
さきほどの流通の状況からして、飲食店が仕入れる飲食料品が適正に消費税相当額値下がりしていれば、飲食店の商品価格もある程度値下がりしていて、課税売上高が少し下がっている可能性はありそうではありますが、
現実的には、飲食店に飲食料品が辿り着く(流通していく)までには8%相当額の値下げ分はうやむやになってしまっているような気がします。つまり、飲食店の仕入れ価格は、消費税廃止前後でほとんど変化がないのではないでしょうか。
となると、飲食店は飲食料品の仕入れについて仕入れ税額控除が受けられなくなるので、消費税の納税額はいままでの比にならないほどの負担となる恐れがあります。
ひょっとすると、消費税負担分を補填するために、商品価格が値上がりする可能性も否定できません。
この飲食料品の消費税廃止は、飲食店にとってかなりの打撃かもしれませんね。
まとめ
飲食料品の消費税の廃止は、消費税全体のうちの飲食料品部分だけの話であるので、いろいろとややこしくなってしまっています。
個人的には、消費税をいじるのであれば、全部一律で一気に5%に下げる、という方法がすっきりとしてよいのでないかと思います。さきほどの農家の例でいけば、設備等のコスト部分も5%下がるわけですし、飲食料品の価格も下げやすいのではないかと考えます。
飲食料品の消費税の廃止は、現実に飲食料品の価格が消費税分だけ値下がりするとはほとんど考えられないと思います。多少、安くなったりすることはありそうですが、反対に外食は値上がりすることもありそうで、さほどいいことはなさそうだと思っています。
まあやっぱり、現役世代の手取りを増やしたいのであれば、賃金上昇とか物価の下落を狙うよりも、社会保険料を半分とかにしてもらうのが一番手っ取り早い気がしますね。