手術する必要あるのか

 痔瘻により大きな病院での手術日が確定したものの、手術日は10日後くらいでした。

 その間、肛門の痛みなどはほとんどなく、「手術しなくてもいいんじゃない?」くらいに思っていました。まあ、ずっと放っておくとトンネルがたくさんできて最終的に除去してももしかすると人工肛門になるかもしれないということはネット情報で得ていましたから、いずれはしないといけないものなんでしょうが。。。

 私は手術も入院も人生で初めてでしたから、なかなか緊張していたと思います。

 ついに手術の日

 指定された10時半ごろに病院へいきました。するとどういうわけか看護師さんから「すみません、実は病室がまだ空いていなくて…準備していますのでしばらくあちらで待っていてください」と言われ、案内されたのは病室というよりは取り調べ室のような部屋でした。

 看護師さんではなく介護士さんでしょうか、2名の中年女性が看護師さんたちの文句を言いながら簡易ベッドを運び込んできました。

 手術は午後2時過ぎくらいと言われました。ずいぶんと暇でしたので入院のために持参した本を開いて、ひさしぶりに小説を読んでいました。昼食はとっていいらしいので、コンビニで買っておいたパンを軽く食べました。

 手術するための衣服に着替えるように言われ、着替えると一気に病人の姿になりました。時々看護師さんたちがあわただしく様子を見に来ましたが、とある看護師さんたちの次の会話が気になりました。

 「あれ、点滴はない?」「足りないんです。でも、最悪なくても大丈夫だそうです」

 どうやら手術を受ける人はみんなあらかじめ点滴をしているものらしいですが、私は除外されたようでした。この会話はなかなか不安になりましたね。。。

 脊椎麻酔と聞いていたので、とりあえず動けるうちにトイレには行っておいたほうがいいような気がして、何度かトイレには行っておきました。

 このときはまだこのあと手術開始から約8時間ほどトイレに行けなくなるとは思ってもみませんでした。。。

 手術開始!

 手術に呼ばれてオペ室まで歩いていくとき、さすがに緊張しました。大きな自動ドアがウインと開き、看護師さんたちの引率で指定された手術室へ向かいました。

 手術台にうつ伏せになると、以前診察をしてくれたお医者さんが「こんにちは~」とニヤニヤしながら登場しました。

 「緊張してるう? ところで、年齢に比してお若いですよねえ」とか言いながら肛門付近にテープを張っておしりをできるだけ開いていっているようでした。

 脊椎麻酔は、けっこう痛いらしいと聞いていましたが、私の場合は痛みはほぼありませんでした。背中に注射をするなんて想像すると痛そうですが。

 注射後、「では、これはなにか当たっているかわかりますか」と尋ねられました。

 「わからないです」と答えたら「じゃ、大丈夫だね」と聞こえました。

 そのあとすぐに微妙に何かが当たっている、例えるなら、箸がおしりの上でコロコロ転がっているくらいの感触が続きました。「まあ、何かが当たっているくらいならわからんでもないか」と思っていましたが、お医者さんがなにも言いませんので、3分くらいしてようやく既におしりが切り開かれているのだと気づきました。

 まるで医療ドラマのようなハチの巣型の照明の光を感じながら、しばらくうつ伏せになっていました。

 すると、手術室に音楽が流れていることに気が付きました。

 こ、これは、、、B’z だ!!

 どういうテンションで医者は手術をしているんだろうかと疑問に思いましたが、きっとお医者さんの好みの音楽が流せるシステムになっているんでしょうね。

 B’z のいろんな曲を聴きながら、私は肛門にできたトンネルの除去手術を受けました。

 途中から、かなりの寒気を感じてぶるぶる震えはじめました。脊椎麻酔をすると寒気を感じるようになるのかもしれません。「寒いです」と言ったらお医者さんが「確かに寒いかもね」とひとこと言ってバスタオルみたいなものを肩にかけてくれました。あんまり変わらなかったけど、まあ、そんなもんなのかもしれない。

 手術自体は30分くらいで終わりました。ベッドに乗せられてそのまま病室へ運ばれました。

 病室へ

 入院部屋へ戻ってきたとき、午後3時過ぎくらいだった思います。ベットで仰向けになっていましたが、脊椎麻酔で腰から下の感覚がまったくないため体を動かすことはできませんでした。

 いつのまにか腕に点滴が付いていました。

 きっと肛門あたりを切り開かれていて出血していたり体液?が染み出したりしているのだろうと想像すると自分の体がいまどうなっているのか気になって仕方ありませんでしたが、寝返りさえできないのでどうしようもありませんでした。

 麻酔が切れてくるときっとかなり痛むんだろうと思いすでに憂鬱でした。

 ずっと仰向けでやることもないので、そのまま眠りにつきました。。。

 目が覚めたとき、夜6時すぎくらいになっていました。なんと3時間近く寝ていました。ふだんの寝不足分を補えた感じでけっこうすっきりしていました。

 麻酔が弱まってきていて、少し寝返りができるようになりました。少し腕を伸ばして自分のカバンの中から本を取り出してしばらく読書をして過ごすこととしました。とりあえず、痛みは感じることはありませんでした。

 猛烈な尿意

 夜6時過ぎに起きたときから薄々感じていました。

「トイレ行きたいなあ」……

 しかし、まだ麻酔はそこそこ残っており脚を浮かして床に降ろすことはできない状態でした。仕方ないのでもうしばらく読書をして過ごすことにして麻酔が切れて歩けるようになるのを待ちました。

 そしてそのまま夜8時頃になり

「うわあむっちゃトイレ行きたい…!」

 手術直前の午後2時前にトイレに行ったっきりだったので、さすがに我慢できなくなってきました。

 歩けるのかなあ??? 挑戦してみることにしました。すると、どうにか床に立つことができ、脚を引きづりながらちょっとずつよちよち歩きができました。

 私は大部屋に入院していましたので、トイレは部屋を出た先の廊下にありました。

 くそおうトイレいきたい、がんばれがんばれ。。。わずか4メートルほど先にあるトイレに5分くらいかけてなんとか到着し、パンパンになった膀胱からやっと排尿できると喜びながらズボンを下げました。

 そこで自分が初めてパンツの下に青緑色の医療用のオムツのようなものを履いていたことに気が付きました。手術後に履かされていたんですね。

 そしてやっとできるぞう、と思ったら、、、

 あれえ?出ない! えええなんでなんでえ?

 いくら頑張っても尿はでません。こんなに洩れそうなのになんでだようと腹が立ちました。え?いつもトイレどうやってしてるっけ?こんな難しかったっけ めちゃめちゃ困惑していました。どれだけ力んでも何も出て来ません。

 いや、そもそもこれ股間を手で触っても何も感じなくないか???

 つまり腰や脚の麻酔は切れかけていても、肛門を中心に麻酔がかけられているため、まだ肛門や股間には麻酔が切れずにちゃんと残っていたんです。それで何にも出てきませんでした。

 せっかくトイレまで来たのに。。。はち切れそうな膀胱のまま泣く泣く大部屋の自分のベッドまで戻りました。トイレもうまくできない状況に急速に不安になってきました。

 初めて看護師さんを呼ぶ

 トイレがうまくできず、不安になった私はブザーで看護師さんを呼びました。来てくれた看護師さんに、

「麻酔が効いていてまだトイレがうまくできないみたいなんですが、かなり我慢の限界に来ていて、これはいつになったら麻酔が切れるんですか、どうしようもないときはどうなるんですか」

 と尋ねました。

 看護師さんは、「麻酔はあと1時間くらいで切れるからもうちょっと頑張って」とのことでした。ただ、私の下腹部をみて「だいぶパンパンですね。完全に無理ならカテーテルで取り出しますが。。。」と言いました。

 私はこの「カテーテル」という言葉を知らなかったので「それってなんですか」と聞くと、「細い管を先端から挿して膀胱の中から尿を吸い取る」と説明されました。

 実際に観たことないけどなんか想像するだけでとんでもなく辛そうで痛そうなので絶対やりたくないと思い「もう少し我慢します」と伝えて看護師さんに帰ってもらいました。

 そのあとスマホをいじったりしてなんとか気を紛らわしながら1時間をやり過ごし麻酔が切れるのをひたすら待ちました。

 そして午後9時過ぎ、トイレへ再チャレンジしました。8時の時よりも体を動かしやすく楽にトイレにたどり着けました。人生でこんなに張り裂けそうな膀胱になったのは初めてでした。

 頼むから出てくれ。。。そう祈りながら再挑戦すると、今度はうまくいきました。

 た、助かったあ。カテーテルやらずに済んでほんとによかったと思いました笑

 安心してベットに戻り、ある程度体を動かすことができようになったので、医療用オムツのようなものを脱いで着替えました。

 入院に当たっての持参するリストに「生理用ナプキン」とあったので妻から何枚かもらって持ってきていました。おそらく一生手に取ることはないはずだったナプキンでしたが、こんなところで使うことになるとは。。。たぶんこんな感じだろうとパンツに張り付けてから履きました。

 いま自分の肛門がどうなっているのかかなり気になりましたが、自分で見るのは手鏡でもないかぎり見れないし、触ってみるのも怖かったので結局何もしませんでした。

 想定していたより麻酔が切れても痛みはなく、少し安心しました。

 手術日の翌日に退院

 意外にもぐっすりと眠りいい目覚めの翌朝、病院食も完食しました。しばらくすると担当のお医者さんがやってきました。

 「おはようございま~す。どう?痛みはある?」

 「いえ、あんまりないです。」と答えると「悪いけどちょっとだけ見せてくれる?」と言われ、おしりを見せました。すると、

 「うわ、もうすごくうまくできてる! 完璧だこれは。いいですよ、かなり完成度高いので大丈夫です。予定どおり今日退院です!」とハイテンション笑

 医者からは、翌日から仕事に行ってもかまわないがあまり長時間座って仕事することは避けること、車の運転は10日程度はしないこと、腰などに負荷のかかる運動はしないこと等を言われ、1か月後に経過観察のため再来院する約束をされました。

 麻酔は完全に切れているものの、運動どころか歩くのすらペンギン歩きしかできませんでした。こんなので明日から出勤する人が本当にいるのだろうか?と不思議に思いました。

 私はとても会社にいける状態ではないと思いましたので、職場に説明し、5日間休暇をもらって自宅で安静にすることにしました。

 ・・・

 このあとは、自宅療養ですが、この痔瘻というものは、なんといっても手術後のセルフケアが本当に大切で、むしろ手術してからのほうが相当生活に支障が出るものでした…!

 続きはまた次回③へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者

管理人はとちゃん

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